Web制作は「家造り」に似ている

最近、私の実家をリフォームしました。

結婚して家が欲しいと思い、実家の土地のことや両親のこと、子供が生まれたときのこと、予算のことなどいろいろ考えて、最終的に実家をリフォームして2世帯で住むという選択をしました。

考えること、決めることがたくさんあり、大変なこともたくさんありましたが、いろいろこだわって考えてできた家はとても満足した仕上がりになりました。

リフォームをして感じたことがあります。
それは「Web制作は家造りに似ている」ということ。

Webサイトが欲しいと思ったとき、どのように考えるとよいかを「家造り」を例にご紹介したいと思います。

家を造るとき、何から考える?

「家を造りたい」と思ったとき、何から考えますか?

  • 部屋の雰囲気
  • 外観のデザイン
  • 住む場所
  • 間取り
  • 予算
  • 生活の仕方


などなどいろいろ想像が膨らむと楽しくなってきます。

そして、住宅展示場にいろいろ見にいきます。
妻と、「いいね〜!」「素敵ね〜!」なんて話して心はウキウキ。
なんとなくいいなと思った住宅メーカーさんにとりあえず相談して見積もりをしてもらったら・・・

「あれ?? なんか思ってた感じと違う・・・」
「えっ! こんなに(費用が)かかるの?!」

なんてことになり、私は家造りを諦めそうになりました。
「夢と現実は違う」ということがよ〜くわかった瞬間です。

一生に一度のビッグイベント、「家を造る」。
家族を持ったなら一度は考える「夢」です。
そう簡単に諦めるわけにはいきません。

どうしようかと考えているとき、ふと思いました。

「なんで家が欲しいんだろう?」

家を造る目的はなんですか?

そもそも家なんて、寝れて、風呂に入れて、食事がとれて、ゆっくりできる空間があれば機能としては十分なはずです。それならば、アパートで十分、住めればよいのです。

それでも家を造りたいと思うのは、「こんな生活がしたい」「こんな時間を過ごしたい」という自分や家族だけがわかる生活空間と時間(コト)が欲しいからだと気づきました。

最初、家を造ろうと思ったとき、外観デザイン、空間デザイン、間取りなど物(モノ)として家を考えていました。
欲しいのは「モノでなくコト」であると気づいたとき、家に対する価値感が大きく変わりました。

それからは、現在から将来の家族構成、生活の仕方、時間の過ごし方を考え、また私の結婚式のコンセプトであった「輪」も踏まえて、最終的に「実家をリフォームして、2世帯で輪を大切に過ごしたい」と思うようになりました。

ちなみに結婚式のコンセプトは

「縁」「和」「絆(家族の輪)」。
「縁」があって二人が出会い、心通わせて「和み」、深い「絆」を結び、本日、私達は結婚する。私達の「縁」がきっかけで両家の親戚が初めてテーブルを「囲んで」食事をしながら、心通わせ「和み」、新しい「絆」が結ばれる。
紐を「結ぶ」ときは、「輪」をつくらないと結べない。楽しいときも苦しいときも「輪」になって共有できる家族にしたい。

どんな風に過ごしたいかがわかったら、このあと考えることが一気に見えてきました。
私の場合はリフォームなので、現状の家で困っていること、住んでみてもっとこうしたかったことや、2世帯になることでどんな生活をしたいか、どのように共存するかを想像し、間取り、動線、必要な設備など基本的な構造を考えていきました。

構造がまとまると、次は壁紙、床材、照明、設備、家具など空間デザインになります。「輪(和)」を意識したり、家族でそれぞれ好きな空間になるよう好みのものに仕上げていきました。

完成した家は、予算は想定より大きく増えましたが十分に納得した金額でとても満足のいく形となり、これからの生活が楽しく想像でき、毎日快適に過ごしています。

Web制作との共通点

さて、ここまで私がどのように家を考えたかを書きました。
家が欲しいと思って、漠然とした状態で相談・見積もりをしてもらったけどなんか納得ができず、どんな風に過ごしたいかなどの「コト」を考えてからは家に対する価値観が変わり、本当に望んでいるものはなにかが明確になりました。
コンセプト・目的を作ることで考えるベースができ、どんな家を造るべきかはっきり見えてきました。

これはWeb制作でも共通していると思います。

Web制作を考えるときWeb制作の5階層モデルというものがあります。これはJesse James Garrett氏という方が発表したものでWeb制作を5つの段階にわけた構造です。
これを、家を造ることと合わせてみると

となります。

このモデルを例に、Webサイトを以下のように考えるとよいと思います。

コンセプト・目的(家を造る目的)

コンセプト・目的は家造りで言う、なぜ家を造りたいのかを考え、どのように生活したいのか、「コト」として考えていきます。
会社としてWebサイトを作るということは、なにかしらのビジネス的な目的があるからだと思います。
Webサイトを「どのように活用したいのか」、「なんのために欲しいのか」、「どのように知ってもらいたいのか」という目的(コト)から考えることで、ビジネス的な目的からWebサイトの構造、ビジュアルデザインが一貫したWebサイトに仕上げることができ、会社にとって「意味のある」「価値のある」「活用できる」Webサイトとなります。
また、リニューアルの場合は、現状のWebサイトを使用していて困っていることや不満なところも踏まえて考えていくとよいと思います。

要件定義(目的を叶えるための要望)

要件定義は、家造りの場合、家造りの目的を叶えるための要望になります。
私の場合、目的は「実家をリフォームして、2世帯で輪を大切に過ごしたい」としました。これを叶えるために必要なことは、「暖かい家、明るい雰囲気、一緒にご飯食べたい」のようにコトとして考えました。
Web制作では、ビジネス的な目的をもとにWebサイトに必要なコンテンツ、機能などを考えていきます。コンテンツの内容はターゲットとする相手にどんな「コト」を提供できるか、という視点で考えていきます。

サイトマップ (家の設計)

サイトマップは「家の設計」になります。
家造りで言うと、家の目的を叶えるための要望をもとに、間取りや動線、断熱、工法などを考えていきました。
Web制作ではWebサイト全体のページの配置を考えます。ユーザーに目的とするページに素早く辿り着けるようにサイト全体の設計をしていきます。

ワイヤーフレーム(空間レイアウト)

ワイヤーフレームは家造りで言う、家具・収納・設備などのレイアウト、コンセントや照明の配置になります。
Webサイトでは、ページのレイアウトやボタン・図の配置を考えます。Webサイト全体の動線を考えながら、どのページにどの箇所に配置するといいかを検討します。

サイトデザイン(外観・空間デザイン)

最後に全体の見え方のデザインを考えます。
家造りでは、どのような雰囲気の部屋にしたいか、外観にしたいかを考えて、壁紙や床材、家具などを選んでいきます。
Web制作では、どのようなイメージをユーザに与えたいかを考え、ターゲットが好みそうな雰囲気につくりあげていきます。

最後に

Webサイトを作ることは家造りに似ていて、Webサイトの目的を考えることから始まります。
ビジネスのことを考えるとなぜか難しく考えてしまいますが、家造りを例に考えるととても楽に考えられるのではないでしょうか。

Webサイトが欲しいと思ったとき、Webサイトを「モノ」として考えるのではなく、「コト」として考えていき、まずはどんな目的でWebサイトを活用したいのかを考えてみましょう。

私はWeb制作会社でディレクター兼デザイナーをしていますが、いつもWebサイトは「コト」を提供するものと思って制作しています。自分の家を考えるとき、このことに気づかなかったのはとても盲点でした。
「モノでなくコト」に気がついてからは家に対する価値観が変わり、何を優先するか大切にしたいことなど両親、妻、設計士ととことん話しました。話しているとお互い何を大切にしたいかがわかり、意外な部分もあったりして結果的にお互いのことをいろいろ知ることができてよかったです。

見積もりに関しても、家を「モノ」と見ていたから、「予算」に縛られてただ「高い」と感じていました。
家を造ることの目的、「コト」を考えて、こんな生活をしたい、こんな時間を過ごしたいと考えて、これを実現するためにこの費用が必要と思うと、見積もり金額にも十分納得することができました。

Webサイトは建売住宅のように完成されたものを購入することはなく、すべてがオーダーの注文住宅のようなものです。完成形がよくわからないまま発注し、造ってもらいます。
発注するときは「本当にこの業者で大丈夫か・・・」と、不安になることでしょう。

そんな不安をなくすために、私はWebサイトを考えるとき、とことん話し合うことを大切にしたいと思っています。
会社のこと、事業のこと、サービス・商品のこと、使ってもらう人のこと・・・
これらのことを考えることは、いろいろな価値感や想いがあり、とても簡単ではありません。
しかし、いろいろな意見を出しあって話し合い、目的を明確にしていくことで、皆で共通する認識をもつことができ、その方向へまっすぐ進むことができると思います。

Webサイトを「モノ」として考えたら、「作ったら終わり」となりますが、「コト」から考えるということは、「完成してからが始まり」ということになります。作ったあと、想定している目的に達成しているかを確認しながら、運用していくことが大切です。