Webサイトを依頼されたとき、制作会社は「すぐにデザインする、できる」と思われる方は多いのではないでしょうか。
Webサイトを作る前に、いつも考えることがあります。
それは商品・サービスまたは会社のことについて。
Webサイトをつくる目的の多くは、商品・サービスのこと、自社のことを「知ってもらうこと」。
そのときに、その商品・サービスまたは会社をどのように知ってもらうか、価値を感じてもらうかが非常に大切。
使ってもらいたい人に商品の価値が伝わらなければ、どれだけアピールしても無駄になってしまいます。
伝えないといけないのは価値
価値には「機能的な価値」と「情緒的な価値」があります。
機能的な価値は性能、機能、品質など、その商品・サービスそのものが提供する価値です。
情緒的な価値は商品・サービスを使うことで得られる感情・心理的な価値です。
車で例えるなら、
機能的な価値は
- 燃費
- 駆動方式(前輪/後輪/4輪)
- 馬力
- 排気量
- オーディオ類
など、
情緒的な価値は
- かっこいいデザイン
- 静かな走行
- ステータス感(高級車)
- 環境に配慮している満足感(ハイブリッド車)
- ゆったりできて気持ちいい
などになります。
上記の例で、機能的な価値で説明されるのと、情緒的な価値で説明されるのと、どちらがよいか考えてみると、ほとんどの方は情緒的な価値のほうがよいのではないでしょうか。
なぜなら、車を買ったあと、どんな車生活が待っているか想像ができるから。。。
商品を選ぶとき、どこを見ているかというと、機能・スペックというよりは、どんなことができるのか、どんな気分になるのかという感覚的な、感情的なことを見て、想像して選んでいると思います。
いろいろな商品があり、似たような商品もたくさんあるなかで、消費者にどう見られたいか、どう見てほしいかを考えていき、これを伝えることがとても重要だと思います。
では、機能的な価値が必要でないのか?というとそうではありません。
機能的な価値は情緒的な価値を叶えるために必要な価値です。消費者の求めている欲求に応えるためにないといけない必要条件です。他では真似できない自社の技術やノウハウなどであればとても強い価値になります。
伝えたい人を考える
価値を考えていくことの他に、もう一つ考えていることがあります。
それは、どんな人に伝えたいか、使ってもらいたいか。
価値を伝えるといっても誰に使ってもらいたいのかが明確でないと、どんな価値をつくっていくべきかわかりません。
例えば、ハイブリッド車が欲しい人がいます。
同じハイブリッド車でも燃費や環境のために使用したものや、高級車のように静粛性を上げるため、高級スポーツカーでは加速性能を上がるためにも使われます。
ハイブリッド技術がどの機能・性能に使われているかでニーズが大きく変わり、情緒的な価値も大きく変わってきます。
例えば、コンパクトカーのように低燃費のために使われていれば一般的な家庭の消費者に対して経済的な余裕を得られる安心感、高級車の静粛性のために使われているのであれば富裕層に対してラグジュアリーなステータス感、スポーツカーのように加速性能向上のために使われているのであれば車好きな人に対して運転することの喜びなど、価値が変わってきて伝えるべき人が変わってきます。
その商品がどのような目的(コンセプト)で生まれたのかを整理し、一番魅力を感じてもらいたい人をピンポイントに絞ることで価値はより効果を発揮します。
実際に使用している人はその商品の価値が伝わった人です。どんな人か、なぜ選んだのかをヒアリングすることでその人にとっての価値が見えて、伝えたい価値が伝わっているか、また新しい価値の発見にもなります。
価値をデザインする
私がディレクションまたデザインしていて、いつも考えることがあります。
それは、「価値の伝わるデザイン」をつくるにはどうしたらいいか。
デザインを依頼されたら、「すぐデザインしてくれる」と思われている方がとても多いと感じています。
しかし、実際にはすぐにデザインすることはしません。
より価値を伝えるデザインにするためにも、その商品・サービスについてよく知り、深く理解する必要があります。
ご説明いただいて、だいたいの商品・サービスの概要や機能はわかったとしても、それをどんな人が使うのか、どのように使うのか、使ってみてどのように思うか、使うことでどんな喜びを感じるか、何を解決してくれるか、など消費者にとっての「価値」を見つけなければなりません。
価値を見つけることで、その商品の見せるべき、伝えるべきポイント、伝えなければならないターゲットが明確になってきます。そして、伝わるビジュアルや文章として構成し表現ていきます。
だから、デザインをする前に最初に「自社の商品・サービスまたは会社についてじっくり考えること」が大切だと思うのです。これは、制作側だけで考えるよりも、クライアント様と一緒に考えることで、価値を共有することができ、ともに目指す方向に向かって進むことができます。
どんないい商品でも価値が伝わらなければ、結果的に世の中に存在しないのと同じ。
それほど、価値を見つけるということがデザインをする上でも重要なことだと思います。
最後に
商品を買うとき、なぜ買うかというと、その商品は自分にとって価値のあるものだから。
自分の欲求(ニーズ)を満たしてくれるから好きになり、欲しくなるのだと思います。
商品を「見せる」のではなく、「魅せる」。
「見せる」は情報として客観的に伝えることに対して、「魅せる」は魅了するということ。
その商品の価値を一番わかってくれる人に向けて、自分たちの思いやメッセージを伝え、心に響く価値を伝えることで、ファンになり、また買ってくれるのです。
私はその商品・サービスの、人々を魅了するような価値をまずは考えてからWeb制作をすることで「伝わるWebサイト」ができると思います。